雇用調整助成金手続の簡素化に思うこと

こんにちは、千葉県市川市の社会保険労務士 渡辺 巖(いわお)です。 

 

手続が難しいとされてきた雇用調整助成金ですが、大分手続が簡単になりました。6月4日現在で、のべ5万4千件の支給決定とのこと。5月18日までは、「休業計画提出→休業→支給申請提出」というサイクルでの書類作成・提出となっていましたが、19日以降は休業計画提出が必要なくなり、「休業→支給申請提出」と簡素化されました。また、従業員20人以下の規模の会社については簡単な支給申請書が用意され、申請し易くなったように感じます。この申請書に、売上が減少したことを証明する資料、出勤簿(タイムカード)と賃金台帳を添付して提出するということになりますが、都道府県ごとの労働局によって、さらに添付書類が求められる場合があります。東京都では添付書類は増えませんが、千葉県では就業規則(又は雇用契約書)が必要となります。

 

従業員20人超の規模の会社になりますと、上記の支給申請書ではなく、従来の支給申請書を使用します。特に、初回のみとはいうものの、休業協定書を添付することが大きな違いです。休業協定は、会社と労働者代表との協定ですが、これが20人以下の規模の会社が申請する場合は添付不要になったことは意外でした(逆にいうと、これがネックになっていたのかもしれません)。

 

支給申請する際の添付書類が大幅に削減されましたが、添付は不要ということであって、休業協定書はきちんと作成して、会社で保管しておかなくてはいけません。就業規則(又は雇用契約書)についても同様です。そう考えると、簡素化されたとはいうものの、添付書類が減っただけで作成するものは同じということであり、労力は変わらずといったところでしょうか。

 

のべ5万4千件の支給決定という件数は決して多くないと思います。国税庁が発表している国内の法人は約270万社(休眠中の会社も含みます)。さらに個人事業主を加えて、この数字。ここまで簡素化されても増えていかないとしたら、出勤簿や賃金台帳が整備されていないから申請できないということなのかもしれません。この辺りの法定帳簿の整備については税務に比べると行政のチェックが緩いように感じます(これが申請できないことにつながっているとしたら皮肉なことです)。